転成 円卓のフィアナ

【ありがちな世界だけど、僕達は繰り返していく――】 自作の小説を記載、更新は不定期

学生事件簿-4-

 

翌日。
ジルとザクスは、昨夜、ティーアが撮った敵の正体を知るため、とある街中のマンションに来ていた。
「 ……こんな豪華なとこ住んでるの?」
マンションは18階立てで、外見では凄く綺麗なところだった。そんじょそこらの建物とは、全然違う。ジルが驚くのも、おかしくない。
「 まぁ、あいつの仕事が結構特別だからな…」
ザクスは、スタスタとマンションの中に入っていった。
それをジルは追っていった。
「 何階なの?」
「 最上階、最もあいつが一番暮らしやすい場所だ」

マンションの最上階。
その突き当たりに、メカニックのあいつが住んでる。
ザクスは、インターホンを押した。
しかし中々出てこない。
「 ……留守……かな?」
「 いや、そんなことないだろう。ただでさえ、外に行くのも嫌な奴が……」
そうザクスが言い終わる前に、ドアが開いた。
「 誰……?」
顔を覗かせたのは、ジルと同年齢位の青年だった。
少し警戒をしていたが、ザクスとジルの姿を見ると、
「 あ、ザクス、ジル。久しぶりー」
と、まるでやる気の無さが伝わる口調で言った。
「 レアン、久しぶり。元気だった?」
ジルが言った。
「 うーん、元気とは言えないね」
レアンは髪を掻きながら言った。
レアンの姿は上下ジャージで、染めたわけでもないが留めてある後ろ髪が蒼く染まっている。
肩には、ヘッドフォンが掛かっている。
「 今日は何の用?俺、これから寝ようと思っていたんだけど…」
「 寝るのかい……」
未だに太陽は、真上にある。
「 すぐ終わる…。入るぞー」
そう言い、ザクスはレアンの了解を得ずにそのまま部屋に入った。
ジルも、悪気はあったがそのまま一緒に入った。
中は綺麗で、日光が当たる場所なので明るい。
キッチンやテーブルは、まだ使ってないかのように綺麗だ。
「 あ、もうかよ!?」
レアンは、ザクスを止めようとするがすぐに本題を持ち出された。
「 お前、学生が何者かに殺されかけているのを知っているか?」
「 知ってる。ネットじゃあそれが原因で大騒ぎ。朝もニュースで取り上げられたぐらいだよ」
ため息をつきながら、レアンはまだ新しいソファに座った。
「 そうか……」
ザクスは視線をジルに逸らした。
そして、あの事だとジルは把握した。
「 レアン、実はね……」
そう言いジルは、ポケットからSDカードを出した。
「 この中にある写真に、その犯人の敵の顔が写っているんだ。で、その写真を明らかにして欲しいんだ」
ジルはレアンに、SDカードを渡した。
「 と、言うというのは?」
「 この写真、ティーアが撮ったんだけど、どうやらぶれていて明白に敵の顔が見えないんだよ。だから……」
ジルが言う前に、レアンは止めた。
「 わかった。二人とも、こっちに来て」
レアンは、リビングの奥にある扉を開けた。
ジルとザクスは、その部屋に入った。
リビングとは違い、薄暗い部屋でその回りにはパソコンが数台、その他に機械類が並べられてる。
「 うわぁ……凄いね…」
「 でしょ?ほとんど、街からの頂き物。結構、性能は言い方なんだー」
そう言い、レアンは真ん中にあるパソコンにさっき貰ったSDカードが入ったUSBを挿した。
「 ねぇ、レアンはどうしてここにいるの?」
ジルは言った。
「 んー?ザクス、説明してー。こっちで忙しいから…」
「 わかった…」
ザクスは頷き、扉の近くの壁にもたれた。
「 元々、レアンはハッカーだったんだ。結構裏で働いていたらしい…だが、バレてしまったが、逆に街の上の方がそれをいかしてやれると判断したらしい…」
「 だから、街はこの場所を選び俺に預かっている情報を、管理しているってこと。例え街の情報が盗まれても、あちらはほとんど偽物。全てこっちにあるんだ」
レアンはマウスを動かしながら言った。
「 罪滅ぼし…てこと?」
「 そんなとこ」
ジルは納得した。
「 だから、学校に行けないの?」
「 まぁ、それもあるけど……」
レアンはパソコンを見つめながら言った。
「 他にもあるの?」
「 ……………」
しかし、返事は返ってこなかった。
ジルはそれ以上、問い詰めるつもりはなかった。
「 ……よし、出来たよー」
伸びをしながら、レアンは大きな欠伸をして言った。
二人は、パソコンを覗いた。
そこには、銀髪の青年が写っていた。
「 …!!僕、この顔見たことある!」
ジルが言った。
「 知ってるのか?」
「 多分、ミファルもセも見たことあるはずだよ…!」
忘れるはずがない。その青年の名を言った。
「 ……卯月 莉(うづき り)…!」

    ◇   ◆   ◇

「 そうか、卯月が犯人だったのね……」
ジルとザクスは、一旦ジルの家に戻りミファルに報告した。
「 知ってるのか?その卯月って奴…」
「 知ってるも何も、私のクラスメイトだわ。それに…」
「 それに…?」
「 ………………」
ミファルは、黙ってしまった。
しかし、それを把握したのはジルだった。
「 もしかして、生徒会の……?」
「 ……もしかしてね」
「 ジルも知ってるのか?」
「 うん…」

「 一週間前なんだけど、学校はその日は生徒会選挙だったんた。元々はもっと早くやるはずだったんだけど…」
「 なるほど、まぁ事情はあったんだな」
ザクスは納得したかのように、頷いた。
「 うん。で、選挙が始まった。書記や会計、副会長はすぐに決まったんだ…」
無論、それが誰になったのかはザクスも知っている。
以前、ミファルが言ってくれた。
それぞれ一人しか立候補はしていなかったからだ。
「 だけど、会長の方はミファルとその卯月と二人立候補がいたんだ」
「 ちょっと待て。オチが段々わかってきたんだが……」
ザクスは蒼い髪を掻きながら言った。
「 その卯月は、会長になれなくてその腹いせに暴力をしているって考えか?」
ジルは頷いた。
「 うん…簡単にするとそうなるね」
「 ……わりぃ、俺そいつ殴ってきていいか?」
「 ちょっと待てぃ!」
言ったのは、扉を強く開け登場してきたゲーティスだった。
「 外から聞いていたけど、お前は何をしでかそうとしてるんだ!?」
「 なっ!お前こそ何盗み聞きしてんだ!?これは、警察を呼ばないと…!」
「 うぜぇぇ!」
ザクスとゲーティスの間で、喧嘩の雰囲気になっていく一方で、ジルとミファルは話を続けた。
「 こうなっていくと、最終的にはミファルが危ないね…」
腕を組むジル。
「 …だな。確実に私達の仲間が傷つけたいった。もう、私が標的になってもおかしくない…」
「 この様子だと、明日になるかもね」
「 ………謝るべきか」
「 いや、それは無理だろうな」
ザクスと喧嘩していたゲーティスが口を挟んできた。
「 相手は既にミファルを落ち込んでいる為にやっているものだ。落ち込んでいる今が、狙っているはずだ」
「 謝りにいったら、確実にやられる…」
ジルの言葉に頷くゲーティス。
「 …逆を考えれば、相手は人気のない場所にいる。俺らだって打つ手はある」
「 考えがあるの…?」
こくっと頷くザクス。
「 俺の予想だが、下校時に狙う可能性がある。なら、呼びき寄せてやればいい。あえて路地裏に行き、そこで捕まえれば良い。まあ、処分の方は生徒会でなんとかしてくれ」
一通り言い終わったところで、ザクスはため息をついた。
「 お前、なんか頭冴えてるなー」
「 もちろん、お前より頭が良いと思っている。いや、確実にな」
「 なっ!?お前っ…!」
「 はい、そこまでだ」
ザクスとゲーティスがまた喧嘩に入ろうとしたのを、いつの間にかいたセが止めた。
傍には、神海が一緒にいる。
「 大の大人が、子供の前で喧嘩をするなんて馬鹿みたいだぞ?」
「 セ、神海…いつの間に」
ゲーティスがここに入ってきた前からいた」
「 なんか、作戦が立てたみたいだね…!!」
相変わらず威勢のいい神海。
そんな神海の頭ににポンッと手を乗せたセは言った。
「 その作戦、神海が引き受けるみたいだ」
「 そ、それはどうゆうこと?」
ジルは話についていけてない。
焦っているかのような口調で言った。
「 あたしが囮となって、ミファルの格好するんだ…!そうすれば、あたしの能力でなんとかできるから!!」
「 えぇぇ!?危ないよ!」
ジルの反対する言葉に、いつものように明るく言う神海。
「 大丈夫!私だってやる時はやるんだ!それに…!」

「 もう、私は守ってもらうだけじゃダメなんだ。今度は守ってみせる…!!」

                                                                            学生事件簿--に続く